35ターゲット
個人9名・法人26社を制裁指定
ナンバー2
大阪市内のホテルで逮捕
永住権を申請中
在留資格は「高度専門職」
100億ドル
2024年の米国民被害(前年比66%増)

何が発表されたのか

米財務省外国資産管理室(OFAC)は2026年6月23日、カンボジアを拠点に世界規模のピッグブッチャリング詐欺を展開してきたプリンスグループ(太子集団)に関連する個人9名・法人26社の計35ターゲットを制裁指定しました。国際犯罪組織の資産凍結を定めた大統領令13581号に基づく措置です。

プリンスグループについては、2025年10月にOFACが超国家的犯罪組織として指定し、2026年1月には会長の陳志(チェン・ジー)がカンボジアで逮捕・中国へ送還され、米司法省が約127,271BTCの没収民事訴訟を提起しています(前回の記事)。今回はその続きにあたる措置です。

日本の警察庁との連携が明記された

注目すべきは、OFACのプレスリリースに「本日の措置は、日本の警察庁とも緊密に連携して実施された」と明記されている点です。米財務省による詐欺拠点への制裁で、日本の警察庁との連携が公式文書に記載された事例になります。

組織のナンバー2は日本にいた

今回の中心対象は、OFACが組織の「ナンバー2(second-in-command)」と位置付ける胡暁偉(Hu Xiaowei)です。OFACはこの人物を、トップである陳志にとっての「big brother」と記述しています。

この人物は2026年6月14日、大阪市内のホテルで警視庁に逮捕されていました。容疑は電磁的公正証書原本不実記録・同供用で、2026年4月20日に東京都中央区へ転居したとする虚偽の住民異動届を提出した疑いです。在留資格は「高度専門職」で、供述によれば日本の永住権を申請中でした。7月5日には警視庁と大阪府警の合同捜査本部が入管難民法違反で再逮捕しています。

日本国内の報道は一貫して「フー・シー容疑者(44、キプロス国籍・中国出身)」と表記しており、「胡暁偉」はOFACが公表した実名です。両者が同一人物であることは制裁調査会社Kharonが確認しています。

東南アジアの詐欺ネットワークの最高幹部級が、日本を居住地および永住権の取得先として使っていたという構図です。日本は被害者を供給する市場であるだけでなく、加害側の在留・資産の受け皿にもなり得ることを示しています。

被害者の資金はどこへ流れていたか

OFACの認定によれば、胡は英領バージン諸島の3社(Eagle Fortitude、Leisure Focus、Future King)を支配していました。Future King傘下の香港の資産運用会社Future Wing Financial は、暗号資産投資詐欺の被害者に由来すると評価される資金を受領していたと認定されています。

あわせて香港の部下3名と、そのうち1名が支配する英国法人11社(Rocket Sandbox Ltd、DTX Winners Club Limited 等)も指定されました。詐欺収益が英国法人を経由していた経路が示された形です。カンボジアのCCU Commercial Bank、タイのWhite Horse Hotel Management Groupも指定対象となっています。

被害者が送金した資金は、複数国の法人と金融機関を経由して正規の資産運用の形に変えられます。送金後の回収が極めて困難である理由がここにあります。

資金洗浄の結節点への遮断措置

米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は同日、2025年10月のHuione Group最終規則を改正し、制裁済みのHuione Payの後継とされるH-Pay Service PLC およびその一切の承継法人を米金融システムから遮断する規則案を示しました。FinCENはHuione Groupを「サイバー窃盗および暗号資産投資詐欺の収益洗浄の重要な結節点」と位置付けています。同日、FBIサンフランシスコ支局がHuione Groupが使用していたインフラを差し押さえました。

米政府は、2024年に米国民が東南アジア拠点の詐欺で失った額を少なくとも100億ドル(約1兆5,000億円)、前年比66%増と推計しています。

日本の投資家が読み取るべきこと

✓ 相手の所在地が日本国内でも安全の根拠にはならない

組織の幹部が日本に居住し、日本の在留資格を得て活動していた事例です。「日本法人がある」「担当者が日本にいる」ことは正当性を意味しません。確認すべきは金融商品取引業の登録の有無です。

✓ 送金した資金は複数国を経由して短時間で姿を変える

被害金はBVI・香港・英国の法人を経由し、資産運用の形に変えられていました。回収を前提に送金を続けることは、被害を拡大させるだけです。

✓ 「回収できる」と持ちかける二次被害に注意

米司法省の没収申立ての中には、過去の被害者に「盗まれた資金を回収した」と持ちかけ手数料名目で新たに送金させる被害回復詐欺が含まれています。着手金・手数料を先に求める回収話には応じないでください。

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📚 出典・参考情報

制裁対象の内容・金額はOFACのプレスリリース原文で確認したものです。日本国内での逮捕に関する事実は報道に基づきます。報道間で所在地の表記に差がある事項は掲載していません。