何が変わったのか
暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移管する改正法が、2026年7月15日に成立しました(2026年4月10日提出)。暗号資産を有価証券とは別の金融商品として位置付ける枠組みですが、投資詐欺の被害防止という観点からは、暗号資産を扱うかどうかにかかわらず重要な改正が複数含まれています。
投資詐欺対策として重要な3点
1. 無登録営業の罰則が拘禁刑10年へ
無登録で業を行った場合の罰則が、資金決済法の拘禁刑3年から金商法の10年へ引き上げられました(改正前の金商法の5年からも引上げ)。あわせて証券取引等監視委員会の犯則調査の対象に追加され、裁判所による緊急差止命令の対象として監視委の申立て権限が整備されました(改正金商法192条、194条の7第4項、197条1項4号の4、210条1項)。無登録業者への対応はこれまで警告書の発出や裁判所への禁止・停止命令の申立てが中心でしたが、刑事責任の重さと差止めの速さの両面が強化されます。
2. 無登録業者による売付けが「原則無効」に
金商法に違反する無登録業者による売付けが民事効規定の対象に追加されました(改正金商法171条の15)。原則として無効とし、立証責任を転換するものです。被害者が「だまされた」ことを自ら立証しなければ返金を求められないという構造が変わる点で、被害回復の実務に影響します。なお対象は暗号資産取引業者が取り扱っていない暗号資産です。
3. SNS投資インフルエンサーのステルスマーケティング規制
対価を受けて取引判断に関する意見を表示する場合、対価を受ける旨の表示が義務付けられました(改正金商法171条の12)。報酬を受けていることを明かさずに特定の投資対象を推奨する行為が規制対象になります。SNSでの推奨をきっかけに勧誘へつながる導線に直接効く改正です。
暗号資産のインサイダー取引規制も創設
暗号資産についてインサイダー取引規制が新設されました(改正金商法171条の7〜171条の10)。罰則は上場有価証券等と同様に5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、または併科で、課徴金制度の対象にも追加されます。継続的な情報公表として、重要事象が発生した場合の臨時情報と年1回の定期情報の公表も求められます(詳細は内閣府令事項)。
「熟慮期間」— 詐欺の支払手段としての暗号資産に手を打つ
内閣府令事項として、暗号資産が詐欺的な投資勧誘の支払手段として利用されることを未然に防ぐ措置を講じることが示されています。例として、新規に口座を開設した直後は、取引所が管理しない外部ウォレット(アンホステッド・ウォレット)へ移転できない熟慮期間を設けることが挙げられています。
詐欺グループは被害者に暗号資産取引所の口座を新規開設させ、購入した暗号資産を指定アドレスへ送金させる手口を使います。送金されると追跡・回収は著しく困難になるため、開設直後の外部送付を制限する措置は実務的な効果が見込まれます。
施行時期
公表資料の施行期日一覧では、無登録業に対する罰則の引上げは最も早い区分(公布から20日以内)に置かれ、暗号資産規制の本体は令和9年(2027年)4月1日から同年10月1日の区分に配置されています。ただし当室が確認したPDFでは表組みのレイアウトが崩れており、項目と施行日の対応が確定できませんでした。正確な施行期日および公布日・法律番号は未確認です。報道では2027年中の施行とされています。
被害に遭った場合の実務
✓ 証拠は削除される前に保存する
LINEのトーク、送金明細、アプリの画面、広告のスクリーンショット、相手のアカウント情報を保存してください。詐欺グループはアカウントとサイトを短期間で入れ替えます。
相談窓口
- 消費者ホットライン:188(24時間)
- 警察相談専用:#9110(24時間)
- 金融庁相談室:0570-016811(平日10〜17時)
- 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC):0120-64-5005
📚 出典・参考情報
- 金融庁 国会提出法案(第221回国会):提出日・成立日
- 改正法の概要(PDF)
- 改正法の説明資料(PDF):罰則・条文番号の出典
条文番号・罰則の年数は上記金融庁資料で確認したものです。施行期日および公布日・法律番号は資料から確定できなかったため未確認としています。